Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 86.467 Zeichen · 168 Bildschirme
「はい」
与八は、伊太夫直々のこの好意に対して、何と返事をしていいかわからない。人を使うことも、人を信ずることもかなり厳密なこの大家の主人が、直々に、初対面といってよい与八に対して、こんな言葉を下し置かれるというのは、かなり異例であるということを与八はよく呑込んではいないで、どういうわけかこの主人が、自分に対して特別、好意を持っていてくれるということはよく分るのです。与八の明答に苦しむのを見て取ったかのように、伊太夫が言葉をつけ加えました、
「わしの家も、今こそこの通り混雑しているが、これが済んでしまった日には、ひっそりしてしまうのだ、雇人もかなりいるにはいるがね、急に、家中がにぎやかになるというわけにはいかないのだ」
与八は、なんだかこの言葉のうちに、痛々しいものがあるように思われてなりませんでした。
ああ、そうそう、そう言えば、この間の火事で、ここの奥様と、あととりの坊ちゃまが、焼け死んでしまわれたそうな。それに、一粒種のお嬢様というのが、一筋縄ではいかない方で、今、遠くの方へ旅をしておいでなさるとか。してみると、ここの御主人が寂しいとおっしゃるお心持も、ほぼお察し申すことができるようだ。