Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

Lesen Sie 大菩薩峠 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 254.021 Zeichen · 495 Bildschirme

Aozora Bunko

与八、郁太郎が上ってしまってから、湯槽の中はお婆さんの一人湯です。

そこで、いい気持そうにお婆さんは唸りながら、面を拭いて、こちらをながめておりましたが、今、与八が自分の草鞋を押戴いて棚の中へ納めたのを見て、一時、眼を皿のようにしましたけれども、また、改めて、にっこりと心持のよい笑い方をして納まってしまいました。

そうこうしてお婆さんは湯槽から板の間に出ると、小桶に湯を汲んで自分の身を洗いはじめますと、いつのまにかお婆さんの後ろには与八が立っていて、

「お婆さん、流しましょう」

と言いました。

「済みませんねえ」

お婆さんは心から感謝しつつ、それでも辞退はしないで、与八の方へ背中を向けていると、与八は和らかにお婆さんの背中を流しはじめたのです。

「ねえ、若衆さん」

いい心持になりながら、お婆さんは改まった調子で与八に問いかけましたから、

「何です、お婆さん」

「お前さんに一つ、聞きたいことがあるのですがねえ」

「わしにですか」

「はい」

「わしゃ何も知らねえでがすよ」

「聞きたいというのは、ほかのことじゃないがね、今、ここで見ていると、お前さん、わしの草鞋を棚へしまって下すって有難う」