Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.374 Zeichen · 345 Bildschirme
海はいよいよ遠く、月はいよいよ高く上って、千万里の波につらなる、大洋の面のかがやかしさは、今日まで海には見飽きた眼を以てしても、すばらしいと思わないわけにはゆきません。
甲州の山で泣いた月、松島の浜の悩ましい月も思い出の月ではあるけれど、この豪壮で、そうして奥に限りのない広さから来る言いようのない淋しさに似た心地、それが何とも言えない。
お松は、漸く海と月とに酔うては進みつつ行くと、ふと行手に人影を認めました。
それはたった一つ、自分と同じように、この海岸を歩んで行く人影。この島に、ほかにその人が有ろうはずはないから、あれもわたしたちの仲間の一人、わたしと同じように席を外して海の風に吹かれに出た人。誰でしょう――とお松は、それを訝るより先に、自分の胸が轟きました。
誰と言うまでもない、あの席を外して、ああして、ひとりお歩きなさるのは、駒井船長様のほかにはない。いつのまに殿様は、お外しになったのか、気がつかなかった、とお松はそれに胸を轟かすと共に、重い鉛を飲まされたように心がわくわくして、踏む足もとが、しどろに狂う風情です。ぜひなく、そこに立ち尽して彼方の人影を、じっと見つめたままでおりました。