Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

Lesen Sie 大菩薩峠 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.374 Zeichen · 345 Bildschirme

Aozora Bunko

枕許には大小が置いて、その上に黒い頭巾が投げ出してある。そこで若い老尼は全く立ちすくみました。もう、あっという言葉も出ません。

ところが、この奇怪きわまる侵入者は、苦しそうな声を出して、

「御免下さい、あんまり疲れましたから、それに恥かしながら飢えに堪え兼ねて……」

と言いました。

「え、何でございますか」

無意識に若い老尼が言葉を返しますと、

「お腹がすいたのです」

こいつ、あの餓鬼草紙の二の舞をやっている。餓鬼草紙から脱け出した老婆は、大釜を背負い込んでいたが、この餓鬼は釜の代りに大小を持っている。

「それは、お困りでございましょうがなあ」

「疲れはしたし、お腹はすいたし」

どうも、さもしい。お腹がすいた、お腹がすいたと、あまり繰返さないがよろしい。武士は食わねど高楊枝とも言い、腹がへってもひもじうないと言う。それだのに……

この物騒な侵入者は、物騒なわりに気が弱過ぎる。

作り声ではない、ほんとうに疲れきってもいるし、飢えきってもいるし、或いは疲労以上の、飢餓以上の、瀕死の境にいるのではないかとさえ見られるのですから、老尼にも一点、憐憫の心が起ってみると、恐怖心の大半が逃げました。