Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠10
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠10 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 285.635 Zeichen · 558 Bildschirme
と言いますと、神主さんは相変らずニコニコとして、こともなげにそれを打消して、
『そんなことがあるものですか、明るい心を以て見れば、この世界に暗いというところはありませんよ。善心から見れば、悪なんというものが存在する場所はありません。悪というのは、つまり人間に勢いをつけるために、それを征伐させるために、神様がこしらえた道具なのです。悪というものは、本来あるものじゃありません。なあに、貴いものが罪とけがれに生きられるものですか、罪とけがれの中にも、死なないのが貴いものですよ』
『ですけれども神主様……この世には、悪いと知りつつ、それを楽しみたくなり、怖ろしいと思いながら、それを慕わしくなって行くような心持をどうしたものでしょう』
『それそれ、それが闇の物好きだ、すべての罪は物好きから始まる……お前さんにゃ今、おはらいをして上げる』
といって、神主様は大きな御幣を取って、わたしの頭上をはらって下さいました。
そうして、わたしはこの鐙小屋を出た時に、明暗二つの世界の中に、浮いたり沈んだりするような心持でありました。
その夜の夢に、あのイヤなおばさんが現われて、さげすむように、わたしの顔を見て笑い、