Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠10
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠10 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 285.635 Zeichen · 558 Bildschirme
わからないで読むお経を、わからないで聞いてこそ、それで有難味が一層深い。それを口に出していうのが、なんだか惜しいような気持がしてなりません。
なんにしても、このごろのお松の心では、犠牲が感謝であり、奉仕がよろこびであり、忍辱が滅罪であることの安立が、それとはなしに積まれているようであります。
与八としても、ほぼお松と同様で、平淡なるほど自分の立場の堅実を、感ぜずにはおられないと見えます。
人が自分の立場の堅実を感ずるのは、必ずしも財産が出来たから、名誉が高くなったから、というのではありません。自分を打込んで、他のために尽し得るという自信が立ち、その道が開けた時に、はじめて起るのであります。
おのれを放捨して、絶対愛他の生活に一歩進み入る時に、人は一歩だけその立場の堅実を感ぜずにはおられますまい。言葉を換えていえば、我慾を増長せしめた瞬間にこそ、人は自己の立場に不安を感じ、報謝の志を起した時に、はじめて自己の立場の堅実を悟るということが、逆に似て、順なる人生の妙味であります。
お松も、与八も、期せずして、その妙理を会得せんとするのは祝すべきことでありますが、一生の事は必ずしも、そう単純には参らない。