Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠10
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠10 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 285.635 Zeichen · 558 Bildschirme
縫取りといっても、ここでは道具立てをしてかかるわけにはゆかないから、ただあり合せの黒いびろうどに、白の絹糸でもって、胡蝶の形を縫い出して楽しんでいるまでのことです。手すさみに絵をかいて楽しむような気持で、針を運ばせながら、浮き上って来る物の形に、自分だけの興味を催して、自己満足をしているまでのこと――風呂敷には狭いし、帛紗には大きい。縫い上げて、自家用にしようか、贈り物にしようかなどの心配はあと廻しにして。
物を縫うている女の形を見れば、それが若くとも処女というものはない。否、娘というものはない。Wife という文字には、物を縫う女という意味があるそうですが、いかなる若い娘さんをでも、そこへ連れて来て縫物をさせてごらんなさい。それはもう、娘ではない、妻である。否、妻であるほかの形に見ようとしても、見えないものであります。
自然、悍婦も、驕婦も、物を縫うている瞬間だけは、良妻であり、賢婦であることのほかには見えない。
自分の娘を、いつまでも子供にしておきたいならば、縫物をさせてはならない。
老嬢の自覚を心ねたく思う女は、決して針さしに手を触れないがよろしい。