Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠10
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠10 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 285.635 Zeichen · 558 Bildschirme
熱海へ湯治といっても、この女の仕事と、気性では、そう長く湯につかっているわけにゆかないから、今日でようやく一週間――早くも帰りの旅について、これはちょうど、根府川あたりでの物語。
駕籠の垂を明けっぱなして、海を一面にながめながら、女長兵衛式に納まって、外にいる若いのを相手に話すお角さん。悠々として迫らぬ気取り方もあり、ジリジリと焦れったがる舌ざわりもあって、まずはお角さんぶりに変りはない。
ここは雪に埋れんとする白骨の奥とも違い、凩に吹きさらされた松本平とも違い、冬というものを知らぬげな伊豆の海岸の、右には柑橘が実り、眼のさめるほど碧い海を左にしての湯治帰りだから、世界もパッと明るい。
「そうでござんすかねえ」
「そうだとも、お前」
「やっぱり、あの殿様というのは、エライお方なんでございますか」
「エライともお前……お前なんぞに何がわかるものか」
「でも、世間の評判では、あんまりおりこうな方じゃないって、もっぱら、そう言っているようでござんすが……」
「世間の評判なんて、何が当てになるものか、世間が何と言おうとも、エライ方は、やっぱりエライんだから仕方がないさ」