Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠10
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠10 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 285.635 Zeichen · 558 Bildschirme
「まあ、なんという不祥な……」
これは誰でもいい心持はしないでしょう。犯せる罪あって、お仕置に逢って、刎ねられた首が六尺高いところに上げられている運命。それを絵馬にうつして、神仏の御前に奉納するというのは、全く例のないことで、そうして、いたずらとしても無下、非礼としてもこの上もない仕事であります。
それも、子供のいたずらではない。相当の心がけを持って、絵馬師に描かせたものではないが、普通の人が、かなり丹精に、絵馬の筆勢に似せて描いたものであります。
お松は、何ともいえないイヤな思いをさせられながら、手をのべてその絵馬を取外し、なお念のために、その絵馬の裏を返して見ますと、そこには、これも相当の老巧な筆で、単に「巳年の男」と認められてあるのを発見しました。
絵といい、文字といい、これはお松にとっては容易ならぬ謎となりました。これを納めた人の心こそ、測りがたいものだと思いました。
幾度か、打返し打返し見た後に、お松は何かハッと打たれたものがあるように、自分の胸を打つと、馬の背の上から風呂敷を取り出して、その絵馬を包んでしまい、そうして、大切に鞍の前輪へ結びつけておきました。