Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠10
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠10 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 285.635 Zeichen · 558 Bildschirme
」
「まあ、お茶をもう一つ、おあがんなさいましよ」
と、与八が熱いお茶の二杯目を七兵衛にすすめると、
「こりゃどうも御馳走さま」
「ここにたらし餅がある、よろしかあ、おあがんなさいまし」
与八は、傍のほうろくの中にあったたらし餅をとり出して、お盆の上に載せると、
「どうも済みませんねえ」
七兵衛は与八のもてなしぶりを、ようやく不思議な色でながめました。
どうも少し変っている男だと見たのでしょう。第一、もう疾うに許されている首の縄が、まだ外されていないのもこの場合、七兵衛としておかしいくらいに見えました。
つまり、最初のうちこそ、縄を外してくれと要求しながら、その要求通りに縄を投げ出されてみると、それですべてが許されたものと心得て、それからは火をくべることだの、お茶をいれることだの、たらし餅をすすめることだのにとりまぎれてしまって、首の縄を全く忘れ去ってしまったものらしい。
途方もなく人のいい男だ――と七兵衛は、その首の縄を見ると、そぞろに自分ながらおかしさがこみ上げて来るもののようです。そこで、
「若い衆さん、その縄を取っちゃあどうだい、その首の縄を」
自分からかけておいた縄を、こう言って、先方の自決を促すような気持にまでなりました。