Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠10
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠10 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 285.635 Zeichen · 558 Bildschirme
相当の年配の男のくせに、めそめそと、人の隣室へ来て、夜中に、泣いて聞かせる意気地無し――という気になったものですから、少しいって聞かせてやろう、という勢いになりました。
ここが、道庵先生のお節介なところで、癪にさわったら寝ていて、あてこすってやってもよし、怒鳴りつけてやってもかまわないところですが、この先生は、すっくと起き上って、帯を締め直して、そうして、徐々と足を運んで、やおら、その隣室の襖へ手をかけてみると、存外、具合よくスラリとあきました。
「今晩は」
といって、そのスラリとあいた古い襖の間から、ぬっと面を突き出して見ると、そこですすり泣いていたのは、極めてあたりまえの、百姓体の五十男がただ一人、煙草盆を前に置いて、うす暗い行燈の下で、しきりに涙を流しているだけのものであります。
「いや、今晩は、どうも」
先方は、突然の訪問を受けてかなり狼狽した体で、いずまいを直して、道庵先生の方に向き直り、極めてていねいに挨拶をしましたのを、道庵は立って、ぬっと面を突き出したままで、
「お前さん、さいぜんから聞いていれば、しきりに泣いておいでなさるようだが、何が悲しくって、そんなに泣いておいでなさるんだね」