Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠16

中里 介山

Lesen Sie 大菩薩峠16 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 268.946 Zeichen · 520 Bildschirme

Aozora Bunko

一見、お雪ちゃんとは全く別な人間が一人、澄まし込んで座を構えている。

「お前は誰だ!」

と米友が、目を円くして一喝しましたが、先方から手ごたえがありません。

返事はないけれども、人はいるのです、姿は動かないのです。そこで、米友は円くした眼を据えて、じっと、その薄暗い行燈の光と、白くいぶる榾の余烟とを透して見定めると、蒼白い面をしてやつれきった一人の男が、白衣の上に大柄な丹前を羽織って、火の方に向きながらしきりに自分の面を撫でている。最初はただ面を撫でているだけだと思ったが、その指先が長くヒラリヒラリと光るものだから、よく見ると、剃刀を使っているのだということがわかりました。

つまりこの人は、澄まし込んで、ここで面を剃っているのです。

「お前は誰だ」

と二度誰何した途端に、米友は先方の返事よりも早く、自分の胸に反応が来てしまいました。

「なあんだ、お前か。お前はいったい、どこにいたんだ、そうして、いつ、こんなところへ入って来たんだえ」

「雨戸があいているから、そこから入って来たよ」

「どこから?」

「君が出入りをした同じところよ」

「エ、ここからかい、ちっとも知らなかった」