Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠16
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠16 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 268.946 Zeichen · 520 Bildschirme
「頼むよう、助けてくんなよう、人殺し――」
なんという生ぬるい、だらしのない声だろう。だが、明瞭に聞き取れる言葉そのものの綴りは、頼むと言い、助けてくれと言う。ことに、人殺し――に至っては、もう人間の危急として、これ以上の絶叫は無いのです。然るにもかかわらず、ここへ響いて来る音調は、こうも生ぬるい、だらしのない、歯切れの悪い音調なので、むしろ、人をばかにしているようにしか聞き取れない。
こんな生ぬるい、だらしのない、歯切れの悪い絶叫は、いかに九死一生の場合とはいえ、人はむしろ助けに行く気にならないで、ザマあ見やがれ――と蹴くり返したくなるほどの生温い、だらしのないものでありました。
「頼む、頼む、おたのん申します、男一匹がこの場に於て、生きるか死ぬか、九死一生の場合でげすから――」
ちぇッ――いよいよ以てたまらない。聞けば聞くほど生温い、だらしのない音声だ。といって、全く聞捨てにもならないのは、この深夜、胆吹山の山腹で振絞る声なのですから、わざわざ好奇に、こんなところまで、こんなだらしのない絶叫を試みに来る奴があろうはずはないのです。
では、狐か、狸か――しかし、今時の狐や狸は、もっと気の利いた声色を使う。