Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠16
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠16 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 268.946 Zeichen · 520 Bildschirme
本当の幸福を思うならば、これから故郷の中村とやらへお帰りになって、そうして朝晩にこうして、お池と、用水と、井堰とを見守って、一生をお送りなさい。そうでなければわたくしと一緒に、嵯峨の奥というところへいらっしゃい、そこにはいと静かにわたくしたち母子が住んでいるのみならず、今ではあの仏御前も一家族の中の一人となりました、ちょうどあなたぐらいの少年が、何かにつけて一人欲しいと思っていたところなんです――よかったら、いらっしゃい、ね」
言葉が余韻を引いて、姿が隠れてしまいました。水門の蔭に没したようでもあり、水の底に沈んでしまったようでもあります。
賢母も、少年も、惜しそうにその池の面を見つめておりましたが、もう、いずれのところからも再び姿を現わす気色はありませんでした。
それを見ているうちに、今まで明るく点されていた蛇の目桔梗の提灯が、いつの間にかふっと消えておりました。それが消えると、賢母の姿も、沈勇少年の姿もなく、真暗闇。
大平寺の門前の庭に、針のように突立っている例の黒い姿が一つあるばかり。
比良ヶ岳の方を見上げると、時ならぬ新月が中空にかかっている。