Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠16
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠16 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 268.946 Zeichen · 520 Bildschirme
「わたしが水を汲んで上げるから、手をお出し」
「済みません――」
「なかなか深い井戸だね」
「なかなか深うございます、御用心なさいませ」
「さあ、もっと汲んで上げるから、面も、足も、洗ったらいいでしょう」
「まことに恐れ入ります」
「幸内」
「はい」
「こうして車井戸の水を汲み上げていると、あの昔の、躑躅ヶ崎の古屋敷の時のことを思い出さない?」
「思い出さないどころではございません、もうここへ参ります時から、頭の中がその時のことでいっぱいでございます」
「神尾主膳という奴は悪い奴ね」
「悪い、悪い、極悪人でございます」
「かわいそうね、お前は」
「お嬢様、もう、それをおっしゃって下さいますな、おっしゃらなくても、幸内の魂は、それでおびやかされ通しでございます」
「わたしが悪かったねえ、堪忍しておくれ」
「いいえ、お嬢様がお悪いのじゃございません、伯耆の安綱が悪かったのでございます」
「もう、それも言うまい。さあ、面と手をお洗いなら、これでお拭き」
「いいえ、手拭を持っておりますから」
幸内は、最初頬かむりをしていたところの手拭を取り出して、手と、面と、足とをよく拭って、そこに置き並べた草履をつっかけて、はしょっていた尻をおろしました。