Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠16
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠16 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 268.946 Zeichen · 520 Bildschirme
「はい、承知いたしました」
この時のお銀様の頭の中は、もう胆吹の新領土の女王でもなく、あたりに展開する薬草の多いという花野もなく、前に水平線を上げている琵琶の大湖もなく、故郷の有野村の邸内の原野を歩む女としての、やんちゃとしての、驕慢にして、しかも多分の無邪気を持った処女として現われました。昔はこういう時に幸内を召しつれて、よく幸内の口から世間話や、昔話を聞かせられたものでした。唯一の愛人としての幸内は、またお銀様にとって唯一の話し相手でもあれば、また唯一の知識の供給者でもあったのです。幸内と火桶を囲んで夜更くるまで話していたこともあれば、野原をむやみに散歩して、幸内をむやみに叱ったり、困らせたりして、やがてまた自分が済まない気になって、泣いて幸内にお詫びをしてみたりなんぞしたことも絶えずあったのです。
もう、今も、昔も、ありし人も、亡き人も、ごっちゃになってしまったお銀様の頭では、何はさて置き、幸内の口から再び、或いは現実的であり、或いはお伽噺の国の話である物語を聞くことの、うれしさ、床しさに満たされてしまいました。
六十六
そうして、今、幸内が語り出すところの「泡んぶくの仇討物語」