Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠16
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠16 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 268.946 Zeichen · 520 Bildschirme
た。
六十七
いかに熟睡に落ちていたとはいえ、咽喉を突き刺されて眼をさまさぬ者はない。主人はやっと目を見開いて見るとこのていたらくです。
「あ、お前、何でわたしを殺すのだ」
「旦那様、済みませんが、わたしばかりをお恨み下さいますなよ、これはお内儀さんが手助けをして、わたしにこうさせているのだと思って下さい」
「ナニ、家内がどうした?」
「旦那様を亡き者にすれば、旦那様の御身上も、商売も、それからあの美しいお内儀さんも、わたしのものになるのでございます」
「ああ、知らなんだ、知らなんだ、そういうことでここで殺されるとは夢にも知らなんだ、ああ、ここで死にたくはない、盗人追剥に殺されようとも、貴様の手にはかかりたくない、だが、どうも仕方がない、この敵、この恨み、この仇――人はいないか、誰か通りかかりの衆でもないか、ああ、誰も人はいない、人がいなければ鳥でもいい、獣でも、虫でも、いいが……あいにく、この雨、蟻んどう一ついない、ああ、ここで死にたくはない、こいつにだけは殺されたくない――誰か、何か……」
と頻りに苦しみもがいたけれども、今いう通り頼むべき人はもとより、生ける物とては蟻一つ見えはしない。