Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠16

中里 介山

Lesen Sie 大菩薩峠16 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 268.946 Zeichen · 520 Bildschirme

Aozora Bunko

その時、往手の林の中から、いかにもあわただしく転がり出して、こけつまろびつ、こちらへ向って走り来る二つの物体がありました。

不意ではあったけれど、こちらは驚くほどのことはありません。まさしくこの地方に見る、あたりまえの山稼ぎの二人の農夫で、仕事着を着て、籠を背負ったなり。これはこの地特有の副業、或いは正業としての有名な、胆吹山の薬草取りのこぼれであることは疑うべくもありません。ただ、ちょっと驚かされたのは、かく慌しく、こけつまろびつ走る二人のうちの一人が、何か胸に後生大事にかき抱きながら、ものに追われるもののように走り来る事の体が、穏かでないと見らるるばかりです。

いよいよ近づいて見ると、その二人は、額にも手にも、かすり創だらけで、着物もかなり破れ裂けている。妙な恐怖心と、はにかみをもって、お銀様に摺れ違うところまで来たが、存外、歩調がゆるやかになって、その胸に後生大事に抱いたものに眼をくれながら、何かお銀様の好奇に訴えてもみたいようなしなをして、

「いやはや、大変な目に逢っちまいました」

「どうしたのです」

とお銀様も、反問せざるを得ませんでした。