Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠19

中里 介山

Lesen Sie 大菩薩峠19 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 319.771 Zeichen · 617 Bildschirme

Aozora Bunko

「米友さん、私は今、考え事をしていたところなんです」

「何を考えていたんだ」

「いろいろのことを」

「いろいろのことと言えば……」

「それは世間のことと、出世間のことと――人間並みに申しますると、眼で見える世界のことと、眼で見えない世界のこととを考えておりました、人間並みではこれが二つになりますが、私にとっては一つなのです、私の眼には一切が見えない世界のみでございまして、見るべき世界がございません、ですから一つです、見える世界、見えない世界と、事わけをするのは、人間並みに五体整っている人のすることでありますから、私は仮りに世間のこと、出世間のことを二つに分けて申してみました」

さあ、むつかしくなり出した。これからの饒舌の洪水が思いやられる! だが、これは頼まれもせぬに引出した米友に責めがある。せっかく沈黙の世界におとなしくしているものを、返事がなくては張合いがないのなんのと誘発した米友に、充分の責めがあるのであります。いわば眠っている獅子の口髯を引いたようなもの、百千万キロワットの水力のスイッチをひねったようなものですから、今後の奔流は、米友御本人が身を以て防護に当るよりほか、受け方はありますまい。