Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠19
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠19 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 319.771 Zeichen · 617 Bildschirme
「おや」
「お手水じゃないの?」
「さっきから見えないわ」
「どうしたんでしょう」
「朝霧さん」
「朝子ちゃん」
一人が言い出すと、みんなが言い合わせたように呼びかけたが、その求める人の返事がない。村正どんも、さすがにそれが気にかかって、
「一人でも討死をさしては、大将の面目が立たない」
そこで改めて簡閲点呼を試みたが、真実、その朝ちゃんだけがいないのです。呼んでも返事がないのです。
はっ! と何かに打たれたように、村正氏は慌しく、以前のぼんぼりに火を入れさせて、わざと騒がぬ体にして、
「おじさんが探して来るから、みんな安心して待っておいで」
一人で、その雪洞を持って、また廊下を引返して来たのは、今の乱闘の現場――御簾の間――そこへ、二の足をしながら、雪洞をさし入れて見ると、座敷いっぱいに敷きのべた古戦場のあとはそのまま。はっ! と再び動顛してまず眼についたは、かの壁の一隅、まだ人はいる。以前の長身白顔の爛酔客が、あちら向きになってうめいている。しかも、その壁に押しつけられたところは、大蛇が兎を捕えたように、可憐の獲物を抱きすくめて、放すまじと、それにわだかまっている。