Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠2
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠2 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 195.601 Zeichen · 387 Bildschirme
お豊は、その白衣の袂に縋らんばかりに取付いたのでしたが、白衣の人は動かず。
「違う、拙者は吉田竜太郎とやら、そんな人は知らぬ」
「まあ、知らぬとおっしゃいますか――」
疑うべからざるものを疑う、お豊は、しばし取付端に迷いました。
「そなたは女子のようじゃが、誰じゃ、どなたでござる」
「お忘れになりましたか、豊でございます。三輪の薬屋におりました……」
「豊……お豊……」
白衣の人の姿勢はこの時くずれた。
「うむ、その声に違いはないようじゃ、珍らしいところで会った」
「ああ、左様でござんしたか」
お豊は、その人にすがりつくように身をその足許に投げたのを、白衣の人、すなわち机竜之助は、徐かにその手で受けたが、二人が面を見合すべく、木の下闇は暗いし、よし日と月がかがやき渡っても、竜之助はおそらく昔の眼でこの女を見ることはできまい。
「まあ、あなたは……」
お豊は何から言い出して、あの驚き、喜び、つづいて来る怖れを表わそうかを知らないのであります。
竜之助は、よりかかるお豊の身を両手に受けたが、何を思ったか、遽かに振り放つようにして、
「危ない、このまま別れよう」
背を向けて、そうして杖で徐かに地を叩いて歩み出そうとします。