Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠7
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠7 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 242.044 Zeichen · 477 Bildschirme
お絹が手水をつかっていると、植込の南天がガサリとして、
「御新造」
「おや!」
お絹がびっくりしました。
「誰?」
あわや戸を立てきって、人を呼ぼうという時、
「わたくしでございます、がんりきの百蔵でございます」
「百蔵さん――なんだって今時分、こんなところから」
お絹が呆れて、立ち尽していると、
「ようやく尋ね当てて参りました」
外に立っている男は、唐桟の襟のついた半纏を着て、玄冶店の与三もどきに、手拭で頬かむりをしたがんりきの百蔵であります。こうして不意に忍んで来ても、前以て相当の理解があればこそ、お絹もさほどには驚かないものと見えて、
「どうしてここがわかったの」
「昼のうち、あるところで、福兄さんの姿を見かけたものだから、あとをつけて漸くわかりました」
「あんまり突然だから、こんなにびっくりしてしまった」
お絹は胸へ手をさし込んでみる。
「……それでも笹子峠の時ほどびっくりはなさるまい」
「あの時は命がけだったよ」
「こっちも命がけでしたよ。どうです、徳間峠の時と比べたら」
「あの時は怖かった、あんな怖い思いをしたことはありません」
「この通り右の片腕を打ち落されて、生れもつかぬ片輪にされちまったのは誰故でしょう」