Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠7
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠7 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 242.044 Zeichen · 477 Bildschirme
「長房というのへ出て小仏へかかるのが順でございますけれども、駕籠屋さんが慣れていますから、高尾の裏山を突切ると言いました、五十丁峠の道をわけて、山道づたいに上野原へ出た方が、道は難渋でも、人目は安心でございます」
「いや、なにかとお世話になるばかりで、御恩報じもできないことを痛み入ります」
と竜之助は、焚火に手をかざして、その蒼白い面に、いささかながら感謝の閃きを見せると、女は、
「いいえ、どう致しまして、わたくしこそ、命を助けていただいた御恩が返しきれないのでございます」
「いつ、拙者が人の命を助けたろう」
「お忘れになりましたのですか」
女はその言葉に呆れたらしい。
「そなたに助けられた覚えはあるが、そなたを助けた覚えはありませぬ」
「まあ、ほんとうにお忘れになりましたのですか、あの、巣鴨の庚申塚のことを」
この時、女は、病気のせいでこの人の記憶が鈍ったのではないかと、まじめに疑いはじめたが、竜之助は、
「覚えていますとも……」
「それごらんなさいませ。あのことがなければ、わたくしはどうなっていたか知れません、いいえ、わたくしはあの時に殺されていたのです、それを、あなた様に助けられましたので」