Japanische Klassiker mit Furigana
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あまくさしろうのようじゅつ
天草四郎の妖術
国枝 史郎
Lesen Sie 天草四郎の妖術 (あまくさしろうのようじゅつ) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.401 Zeichen · 17 Bildschirme
「此方だ此方だ!」
と復声がします。遠い所から来るようです。声の来る方に林があり其林の裾の辺をその老人が歩いています。
「お爺さあァん!」
と声を張り上げ四郎は呼び乍ら足を空にして其方へ走って行きました。
間も無く林まで行き着きましたが、もう其時は老人は遙かの岡の上に立っていました。四郎は少しも勇気を挫かず岡を目掛けて走って行き、漸く岡へ着いた時には、今度は老人は遙か彼方の小川の岸に彳み乍ら四郎を手招いて居りました。
今度は流石に落胆りして四郎は足を止めましたが、併し何うにも名残惜くて引っ返えす気にもなりませんでした。
其時老人は手を上げて二、三度四郎を招きましたが「小僧!」と復も呼ぶのでした。
それで復もや元気を出して四郎は其方へ走って行きました。
併し全く不思議なことには何んなに四郎が走っても何うしても老人へは追い着けません。その癖老人は疲労れた足つきでノロノロ歩いているのです。
小川を越すと広い野となり野を越すと小高い丘となり丘の彼方は深い林で白い色の見えますのは辛夷の花が咲いているのでしょう。
やがて夕暮となりました。ケンケンと鳴く雉子の声。