Japanische Klassiker mit Furigana
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ぶにんりしょうき
夫人利生記
泉 鏡花
Lesen Sie 夫人利生記 (ぶにんりしょうき) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.693 Zeichen · 26 Bildschirme
」
舌はここで爛れても、よその女を恋うるとは言えなかったのである。
「どの、お写真。」
と朗に、しっとり聞えた。およそ、妙なるものごしとは、この時言うべき詞であった。
「は、」
と載せたまま白紙を。
「お持ちなさいまし。」
あなたの手で、スッと微かな、……二つに折れた半紙の音。
「は、は。」
と額に押頂くと、得ならず艶なるものの薫に、魂は空になりながら、恐怖と恥とに、渠は、ずるずると膝で退った。
よろりと立つ時、うしろ姿がすっと隠れた。
外套も帽も引掴んで、階を下りる、足が辷る。そこへ身体ごと包むような、金剛神の草鞋の影が、髣髴として顕れなかったら、渠は、この山寺の石の壇を、径へ転落ちたに相違ない。
雛の微笑さえ、蒼穹に、目に浮んだ。金剛神の大草鞋は、宙を踏んで、渠を坂道へ橇り落した。
清水の向畠のくずれ土手へ、萎々となって腰を支いた。前刻の婦は、勿論の事、もう居ない。が、まだいくらほどの時も経たぬと見えて、人の来て汲むものも、菜を洗うものもなかったのである。
ほかほかとおなじ日向に、藤豆の花が目を円く渠を見た。……あの草履を嬲ったのが羨しい……赤蜻蛉が笑っている。