Japanische Klassiker mit Furigana
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かのうせいのぶんがく
夫婦善哉
織田 作之助
Lesen Sie 夫婦善哉 (かのうせいのぶんがく) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 47.834 Zeichen · 94 Bildschirme
もっともそれとても一生食うに困らぬくらいの額だったが、おれはなんとなく気にくわず、一年経たぬうちに、その金をすっかり使ってしまった。株だ。ひとに儲けさせるのはうまいが、自身で儲けるぶんにはからきし駄目で、敢えて悪銭とはいわぬが、身につかなかったわけだ。
一方お前は、おれに見はなされたのが運のつきだったか、世間もだんだんに相手にしなくなり、薬も売れなくなった。もっとも肺病薬にしろ、もっと良い新薬が出て来たし、それに世間も悧巧になるし、あれやこれやで、これまで手をひろげた無理がたたったのだ。
派手な新聞広告が出来なくなると、お前の名も世間では殆んど忘れてしまった――というほどでなくとも、たしかに影が薄くなって来た。すると、お前はもう一度世間をあっと言わせてやろうと、見込みもない沈没船引揚事業に有金をつぎこんだり、政党へ金を寄附したり、結局だんだん落目になって来たらしいと、はた目にも明らかだった。
それにしても、まさかおれと別れて五年目の今日、お前が二円の無心にやって来ようとは、――むろん、予想していた、見抜いていた――しかし、その来方が余り早すぎた。