Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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かのうせいのぶんがく

夫婦善哉

織田 作之助

Lesen Sie 夫婦善哉 (かのうせいのぶんがく) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 47.834 Zeichen · 94 Bildschirme

Aozora Bunko

八

もう年も年だが、それにしても、以前に比べて随分顔色がわるかったじゃないか。たちのわるい咳もしていたじゃないか。いや、だからといって、肺をわるくしたのか、なんてそんな皮肉を言ってるのじゃない。それに、もうお前は肺病薬を売ってるわけじゃない。いまは、たった二円の金に困っているのだ。しかも、それを隠そうとはしない。情けない話だ。なぜ、川那子丹造らしく、二千円貸せと、大きく出ないのだ。

しかし、よしんばお前に二千円貸せといわれても、二千円はおろか、二円の金もおれには無かった。恥かしいが、本当のことだ。御覧の通り、医者はおろか、薬を買う金もないのだ。安い薬草などを煎じてのんで、そのにおいで畳の色がかわっているくらい――もう、わずらってから、永いことになるんだ。

結局お前は手ぶらですごすご帰って行った。呼びかえして、

「――あれはどうしてる?」

と、お千鶴のことを訊きたかったが、どうせ苦労しているにちがいないと思うと、聴けばかえって辛くなるだろうと、よした。お千鶴ももう年だ。なんとなく、あの灸婆のことが想い出されたりして、想えばお千鶴も可哀想な女だと、いまはもう色気なぞ抜きにして、しんから同情される。