Japanische Klassiker mit Furigana
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しっさくき
失策記
豊島 与志雄
Lesen Sie 失策記 (しっさくき) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.228 Zeichen · 9 Bildschirme
彼女は一週間おきくらいに私の家へやって来て、決心はついたかと促すのである。私の言葉などは全然無視してかかり、早く決心せよと迫るのである。十万円の持参金を貰って、その半分ほど使うつもりで、一二年世界漫遊をなさるもよかろうし、或は落着いて論文を書くなり、「レ・ミゼラブル」のような大作を書くなり、自由になすったらよかろう、ついては一日も早く、形式だけでも見合をなすったら……とそんなことに一人できめてしまった。
これはとても手におえないと思ったので、私は一つ条件を持出してみた。見合の折に、その令嬢とどんな話をしてもよいかという条件なのである。彼女は即座に承諾した。そして次のような会話がなされたのである。
「私は女の髪が好きなんですが、髪の話をしてもよろしいんですか。」
「ええどうぞ。ウェーヴが、それはきれいですよ。」
「女の眼もいいですね。眼の話をしてもよろしいんですか。」
「ええどうぞ。写真の通り、近代的な美しい眼ですよ。」
「耳の話をしてもよろしいんですか。」
「ええどうぞ。」
「鼻の話をしても……。」
「鼻……。」
彼女は眼をまんまるくして、いつもの癖で鼻を蔽いかけたが、とたんに私の真意を覚って、すっかり憤慨した……らしかった。