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Japanische Klassiker mit Furigana

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きだんクラブ〔せんごばん〕

奇談クラブ〔戦後版〕

野村 胡堂

Lesen Sie 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.033 Zeichen · 22 Bildschirme

Aozora Bunko

「君は、君は?」

「見忘れたのか、僕は丹波丹六だよ、そして今は、このビルディングの小使兼守衛さ」

「えッ」

「君の成功と顛落は物すごかったが、僕の方はひどく地味で、B興業を出てから、どんな努力の蓄積も、とうとう役に立たず、ジリジリとこの地下室まで落ちてしまったよ」

「フム」

「ところで、さっき、このビルディングの七階から飛降りた中年の婦人があるのだ。幸い電線に引っ掛って生命は助かったが、ひどい怪我をして、ここに運び込まれている――一寸顔を見てやってくれないか――それ、窓の下に、見えるだろう」

小使の丹波丹六の指した方、薄暗い窓の下に据えたベッドを見ると、そこには中年の女が一人、半身を繃帯で巻かれて、静かに横たわっているのです。乞食よりもひどい身なりや、栄養不良の皮膚の色などを見ると、その飛降り自殺をくわだてた原因も大方わかりそうです。

ベッドに半身を起して一と眼、その女の顔を見た笠森仙太郎は驚きました。

「あ、美奈子」

それは巨億の富を水の如く使い果して、映画俳優某に捨てられ、乞食のようになり下った、かつての美しいシレーヌ――笠森仙太郎の恋女房美奈子でなくて誰であるものでしょう。