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Japanische Klassiker mit Furigana

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きぐう

奇遇

芥川 竜之介

Lesen Sie 奇遇 (きぐう) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.238 Zeichen · 13 Bildschirme

Aozora Bunko

いや、痛飲ばかりではない。吃喝嫖賭の道楽にも、全然遠のいてしまったのである。趙生を始め大勢の友人たちは、勿論この変化を不思議に思った。王生ももう道楽には、飽きたのかも知れないと云うものがある。いや、どこかに可愛い女が、出来たのだろうと云うものもある。が、肝腎の王生自身は、何度その訳を尋ねられても、ただ微笑を洩らすばかりで、何がどうしたとも返事をしない。

そんな事が一年ほど続いた後、ある日趙生が久しぶりに、王生の家を訪れると、彼は昨夜作ったと云って、元体の会真詩三十韻を出して見せた。詩は花やかな対句の中に、絶えず嗟嘆の意が洩らしてある。恋をしている青年でもなければ、こう云う詩はたとい一行でも、書く事が出来ないに違いない。趙生は詩稿を王生に返すと、狡猾そうにちらりと相手を見ながら、

「君の鶯鶯はどこにいるのだ。」と云った。

「僕の鶯鶯? そんなものがあるものか。」

「嘘をつき給え。論より証拠はその指環じゃないか。」

なるほど趙生が指さした几の上には、紫金碧甸の指環が一つ、読みさした本の上に転がっている。指環の主は勿論男ではない。が、王生はそれを取り上げると、ちょいと顔を暗くしたが、しかし存外平然と、徐ろにこんな話をし出した。