Japanische Klassiker mit Furigana
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おんなごころのつよければ
女心の強ければ
豊島 与志雄
Lesen Sie 女心の強ければ (おんなごころのつよければ) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 47.011 Zeichen · 94 Bildschirme
」
「わたくしの主人ですの。」
柿沼治郎、東京の郊外で、小さな製菓会社を経営している人だとか。然し、千代乃はその主人のことを、あまり語りたくないらしかった。
「柿沼、いやな名前でしょう。わたくし、きらいですわ。」
皮肉めいた微笑を浮べている。名前が嫌いなのか、人柄が嫌いなのか、そのへんのことは曖昧だった。
ふと気がつくと、いつのまにか電燈がともっていた。電力が足りないらしく、ぼんやりともってるので、意識されなかったのであろう。雷鳴はもう遠退いたが、雨がしとしと降り続いている。雷雨のあととも思えないような、しめっぽい降り方だ。
「こんなところに、一人でいらして、よく淋しくありませんね。」
「もう、馴れていますもの。」
そう言いながらも、途切れがちな話の合間には、自然と、外の気配に耳をかすらしい様子だった。
雨音だけがしていた。
千代乃はつと立ち上って、手洗いに行き、それから、裏口、表口、二階と、すっかり戸締りをしてしまった。
「こんな雨の晩、沢蟹がいやですわ。」
家のそばに、小さな谷川があって、雨で水がふえると、沢蟹が岸へ這い上ってくる、それがいやだと言う。