Japanische Klassiker mit Furigana
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こうじんぶつ
好人物
豊島 与志雄
Lesen Sie 好人物 (こうじんぶつ) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.567 Zeichen · 21 Bildschirme
三、平岡敏行の話
村上三千子の服毒は、発見が早かったため、大事に至らずして済んだ。医者が呼ばれ、彼女は病院に運ばれ、そして僅かな日数で健康体に回復した。
この間に、私が聞いたところでは、感嘆したことが二つある。
一つは、高木恒夫の落着いた態度だ。彼は三千子の異変を察知するや否や、その家の女将や女中に指図し、医者にも適宜な依頼をして、万事を急速に而も穏便に取計らってしまった。その旅館も人気商売だし、三千子とてもムラサキのマダムとしての人気商売だし、町医者だってまあ言わば同類だし、大事件ならばとにかく、つまらない事件では名声を世に売るわけにはゆかず、高木の希望通りになって、警察の方にも内密に終った。あの温厚な高木にそんな臨機な才能があろうとは、私には思いがけなかった。もっとも、その翌日、私は高木から電話で呼び寄せられて、いろいろ相談に応じてやり、進んで前後措置の手助けもしたのである。
次に、これは非常にデリケートな問題だが、三千子は意識を回復してから高木に逢いたがらなかった。というよりも、逢うのを恐れた。そのことを私から高木に伝えると、高木は例の微笑を含んだ眼眸で、事もなげに頷いて、彼女に逢おうとはせず、万事の交渉を私に任せた。