Japanische Klassiker mit Furigana
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こをつれて
子をつれて
葛西 善蔵
Lesen Sie 子をつれて (こをつれて) von 葛西 善蔵 (かさいぜんぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.970 Zeichen · 34 Bildschirme
松の樹にはいつでも蝉がギン/\鳴いていた。また玄関前のタヽキの上には、下宿の大きな土佐犬が手脚を伸して寝そべっていた。彼は玄関へ入るなり、まず敷台の隅の洋傘やステッキの沢山差してある瀬戸物の筒に眼をつける――Kの握り太の籐のステッキが見える――と彼は案内を乞うのも気が引けるので、こそ/\と二階のKの室へあがって行く。……
「……K君――」
「どうぞ……」
Kは毛布を敷いて、空気枕の上に執筆に疲れた頭をやすめているか、でないとひとりでトランプを切って占いごとをしている。
「この暑いのに……」
Kは斯う警戒する風もなく、笑顔を見せて迎えて呉れると、彼は初めてほっとした安心した気持になって、ぐたりと坐るのであった。それから二人の間には、大抵次ぎのような会話が交わされるのであった。
「……そりゃね、今日の処は一円差上げることは差上げますがね。併しこの一円金あった処で、明日一日凌げば無くなる。……後をどうするかね? 僕だって金持という訳ではないんだからね、そうは続かないしね。一体君はどうご自分の生活というものを考えて居るのか、僕にはさっぱり見当が附かない」
「僕にも解らない……」