Japanische Klassiker mit Furigana
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こをうばう
子を奪う
豊島 与志雄
Lesen Sie 子を奪う (こをうばう) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 39.292 Zeichen · 80 Bildschirme
食後皆は向うの室で何をしてるのだろう? そんなことが夢のように気にかかった。そして自分一人が仲間外れの不用な人間のように思われてきた。そうだ、皆はこの自分が同席しない時の方が気楽なのだ。勝手にするがいい!……それでも彼は何かしら待っていた。誰かが、皆が、自分を探しに来てくれるのを。
瀬戸が彼を探しに来た。そして彼の肩に手を置いて云った。
「実は、私は敏子を連れ戻すために来たんだが……その手筈だったんだが、あの模様ではね。……まあ今晩一晩だけ泊めてやったらいいだろう。幾代も兼子もそう云ってるんだから、お前もそのつもりでね。」
「いいようにして下さい。」と彼は冷かに云った。
瀬戸が帰ってゆくことは分かっていたけれど、彼は玄関まで見送りもしなかった。機械的に立ち上った足で、庭の中をまた歩いていると、向うの室に敏子の姿を見かけた。彼は一寸眼を見据えた。それからつかつかとはいって行った。
敏子は膝の上に子供を抱いて室の偶にしょんぼり坐っていた。彼の方をちらりと見上げて、また眼を伏せてしまった。彼ははいって来た縁側の障子を閉めた。閉め切ると、自らはっとした。電気の光りに輝らされてる四角な室、隅っこに顔を伏せている彼女、入口を塞いでつっ立っている自分、その光景が宛も、桂の中の野獣とその餌食とのように頭に映じた。