Japanische Klassiker mit Furigana
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やもり
守宮
豊島 与志雄
Lesen Sie 守宮 (やもり) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.180 Zeichen · 5 Bildschirme
或る距離まで近守って見ると、それはもう自分の姿ではなく、一の幻影……幻覚なのである。
それに囚われてなるものか! 或る精神病院の入院患者は、窓硝子に映る自分の姿を恐れ初め、やがて鏡を恐れ、水面を恐れ、闇を恐れ、そして白昼も自分の姿がついて廻った。或る有名な文学者は、自分の椅子に腰かけてる自分自身を見、飲もうとする水を先に飲み干してしまう自分自身の姿を見、摘もうとする花を先に折取ってしまう自分自身の姿を見た。
私は、自分自身の姿に馴れようとして、硝子戸に度々それを呼び出してみた。それでも足りずに、病院のあの男を真似て、起き上ったり屈みこんだりして、自分自身の姿を現滅さしてみた。あの男も実際そういうことをしていたのかどうか、それは私にはやはり知る由もない。
机に向っている時、ふと、もう忘れはてたつもりでいても、夜更けなど、硝子戸の自分の姿に気が惹かれることがある。然しそこには既に、大きな守宮が食いあきた腹をこちらに見せて、鈍感に、気長に、悠然と、いつまでも、恐らく夜通し、じっとのさばっている。生餌を食うその貪慾さも、自分自身の映像に怯える神経衰弱さに比ぶれば、自然そのものの神性に近い。