Japanische Klassiker mit Furigana
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いえ
家
島崎 藤村
Lesen Sie 家 (いえ) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 141.411 Zeichen · 285 Bildschirme
「あの位、俺が言ったら、兄貴もすこしはコタえたろう」
と言ってみたが、その時は二人とも笑えなかった。実の家族と、病身な宗蔵とは、復た二人の肩に掛っていた。
「鶴ちゃん」
とお俊は、叔父達の行った後で、探して歩いた。
「父さんが明日御出発なさるというのに……何処へ遊びに行ってるんだろうねえ……」
と彼女は身を震わせながら言ってみた。一軒心当りの家へ寄って、そこで妹が友達と遊んで帰ったことを聞いた。急いで自分の家の方へ引返して行った。
こんなに急に父の満洲行が来ようとは、お俊も思いがけなかった。家のものにそう委しいことも聞かせず、快活らしく笑って、最早旅仕度にいそがしい父――狼狽している母――未だ無邪気な妹――お俊は涙なしにこの家の内の光景を見ることが出来なかった。
長い悲惨な留守居の後で、漸く父と一緒に成れたのは、実に昨日のことのように娘の心に思われていた。復た別れの日が来た。父を逐うものは叔父達だ。頼りの無い家のものの手から、父を奪うのも、叔父達だ。この考えは、お俊の小さな胸に制え難い口惜しさを起させた。可厭しい親戚の前に頭を下げて、母子の生命を托さなければ成らないか、と思う心は、一家の零落を哀しむ心に混って、涙を流させた。