Japanische Klassiker mit Furigana
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いえ
家
島崎 藤村
Lesen Sie 家 (いえ) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 126.748 Zeichen · 254 Bildschirme
三吉は子供の傍の方で妻の歔泣の音を聞くまでは安心しなかった。
浅間登山の一行は翌日の午前に成って帰って来た。直樹は好きな高山植物などを入口の庭に置いて草鞋の紐を解いた。
「兄さんにチョッキを借りて行って、好い事をしました――寒くて震えましたよ」
こう直樹は三吉の顔を眺めて言った。山登りをした制服も濡れ萎れて見えた。この中学生は払暁に噴火口を見て、疲れた足を引摺りながら降りて来た。
直樹を休ませて置いて、三吉は何処へという目的もなく屋外へ歩きに行った。お雪の言ったことに対しても、何とか彼は答えなければ成らなかった。
午後に成って、三吉はスタスタ歩いて帰って来た。彼は倚凭って眺め入っていた田圃の側だの、藉いていた草だの、それから岡を過る旅人の群などを胸に浮べながら帰って来た。家へ戻ってみると、直樹は疲労を忘れる為に湯に行った留守で、お雪は又、子供を背負いながら働いていた。彼女は、「お暇を頂かせて下さい」と言出したに似合わず、それ程避けたい生活を送っている人とも見えなかった。三吉は自分の部屋へ行った。机の上に紙を展げた。
曾根――旅舎の二階の壁のところに立って、花束を嗅いで見せた曾根の蒼ざめた頬は、未だ三吉の眼にあった。