Japanische Klassiker mit Furigana
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いえ
家
島崎 藤村
Lesen Sie 家 (いえ) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 126.748 Zeichen · 254 Bildschirme
その日は三吉と同行を約束した人も有ったが、途中の激寒を懼れて見合せた位である。三吉は外套の襟で耳を包んで、心配らしい眼付をしながら家を出た。白い鼻息をフウフウいわせるような馬が、客を乗せた車を引いて、坂道を上って来た。三吉はある町の角で待合せて乗った。
雪はまだ深く地にあった。馬車が浅間の麓を廻るにつれて、乗客は互に膝を突合せて震えた。二里ばかり乗った。馬車を下りて、それから猶山深く入る前に、三吉はある休茶屋の炉辺で凍えた身体を温めずにはいられなかった。一里半ばかりの間、往来する人も稀だった。谷々の氾濫した跡は真白に覆われていた。
訪ねて行った友達は牧野と言って、辺鄙な山村に住んでいた。ふとしたことから三吉はこの若い大地主と深く知るように成ったのである。そこへ訪ねて行く度に、この友達の静かな書斎や、樹木の多い庭園や、好く整理された耕地など――それを見るのを三吉は楽みにしていたが、その日に限っては心も沈着かなかった。主人を始め細君や子供まで集って、広い古風な奥座敷で話した。この温い家庭の空気の中で、唯三吉は前途のことを思い煩った。事情を打開けて、話してみようと思いながら、翌日に成ってもついそれを言出す場合が見当らなかった。