Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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いえ

家

島崎 藤村

Lesen Sie 家 (いえ) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 126.748 Zeichen · 254 Bildschirme

Aozora Bunko

夫婦の心の内には、新規に家の形が出来て、それが日に日に住まわれるように成って行く気がした。

夫婦は引越の仕度にいそがしかった。お雪は自分が何を着て、子供には何を着せて行こう、といろいろに気を揉んだ。

「房ちゃん、いらっしゃい。着物を着てみましょう――温順しくしないと、東京へ連れて行きませんよ」

こう娘を呼んで言って、ヨソイキの着物を取出してみた。それは袖口を括って、お房の好きなリボンで結んである。お菊の方には、黄八丈の着物を着せて行くことにした。

「菊ちゃんは色が白いから、何を着ても似合う」

と皆なが言合った。日頃親しくして、「叔父さん」とか「叔母さん」とか互に言合った近所の人達は、かわるがわる訪ねて来た。

「いよいよ御別れでごわすかナア」と学校の小使も入口の庭の処へ来て言った。

「何物も君には置いて行くようなものが無いが、その鍬を進げようと思って、とっといた」と三吉は自分が使用った鍬の置いてある方を指して見せた。

「どうも済みやせん……へえ、それじゃ御貰い申して参りやすかナア。鍬なんつものは、これで孫子の代までも有りやすよ」

小使は百姓らしい大きな手を揉んで、やがて庭の隅に立掛けてある鍬を提げて出て行った。