Japanische Klassiker mit Furigana
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てらさかきちえもんのとうぼう
寺坂吉右衛門の逃亡
直木 三十五
Lesen Sie 寺坂吉右衛門の逃亡 (てらさかきちえもんのとうぼう) von 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.243 Zeichen · 19 Bildschirme
(これで、安心した)
と、すっかり、落ちつくと共に
(何んだか、済まんような)
とも、感じた。
(俺のことは喋っていないだろう。喋ったって、対手は死んだのだし、俺は生きているんだ、他の奴が、何をいったって、太夫が、人に話さずに、俺にだけ話をして、国許の女房へ知らせてくれと、いっておられたから、といえば、それでいいんだ――だが、切腹ときまれば、俺の名も連ねてある以上、俺へのお咎めは――)
そう思うと、不安になってきた。
「さあ、吉右衛門、同道しよう」
「手前――」
「何か、吉右衛門、短気なことをしたなら」
「いいえ、これから、江戸へ参って、後始末をすることが御座ります。太夫と二人で、話をしておきましたことで。只今から、すぐ出立して――」
「そんな――それは余り――」
「いえ」
吉右衛門は、立上った。
「それでは止めもせんが――行ったり、来たり遠い所を」
「すぐ戻って参ります」
「頼む、この村の名誉だでのう」
吉右衛門は、小さい行李から脚絆を出して当てながら
(これで、咎めさえ無いときまったなら、俺のものだ。村の奴らあ、家まで建ててやるといってくれるし、忠義無類の下郎には成るし――そうだ。