Japanische Klassiker mit Furigana
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えいがじだい
寺田寅彦随筆集 第二巻
寺田 寅彦
Lesen Sie 寺田寅彦随筆集 第二巻 (えいがじだい) von 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 207.099 Zeichen · 419 Bildschirme
線香花火
夏の夜に小庭の縁台で子供らのもてあそぶ線香花火にはおとなの自分にも強い誘惑を感じる。これによって自分の子供の時代の夢がよみがえって来る。今はこの世にない親しかった人々の記憶がよび返される。
はじめ先端に点火されてただかすかにくすぶっている間の沈黙が、これを見守る人々の心をまさにきたるべき現象の期待によって緊張させるにちょうど適当な時間だけ継続する。次には火薬の燃焼がはじまって小さな炎が牡丹の花弁のように放出され、その反動で全体は振り子のように揺動する。同時に灼熱された熔融塊の球がだんだんに生長して行く。炎がやんで次の火花のフェーズに移るまでの短い休止期がまた名状し難い心持ちを与えるものである。火の球は、かすかな、ものの煮えたぎるような音を立てながら細かく震動している。それは今にもほとばしり出ようとする勢力が内部に渦巻いている事を感じさせる。突然火花の放出が始まる。目に止まらぬ速度で発射される微細な火弾が、目に見えぬ空中の何物かに衝突して砕けでもするように、無数の光の矢束となって放散する、その中の一片はまたさらに砕けて第二の松葉第三第四の松葉を展開する。