Japanische Klassiker mit Furigana
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しょうけい
小景
宮本 百合子
Lesen Sie 小景 (しょうけい) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.323 Zeichen · 15 Bildschirme
舗道に人通りがぐっと殖え、遙か迄見とおしのきいていた街路の目路がぼやけて来た。
空気の裡には交響楽のクレッセンドウのように都会の騒音が高まる。遽しく鳴らす電車のベルの音が、次第に濃くなる夕闇に閉じ罩められたように響き出すと、私の歩調は自ら速めになった。もう私の囲りでは、誰一人呑気に飾窓などを眺めている者はない。何処からこれ程の人々が吐き出されて来たか、大抵一人で、連があっても男は男同士、女は女づれの群が、四隅に離れて立った赤柱の下に数団、待ち遠しげな眼つきで自分の乗ろうとする電車の来る方角を眺めている。
ほんの一時間半も経てば、此十字街の有様はまるで変るだろう。如何にも東洋の夜らしく鋪道の傍に並んだ露店を素見しながら、煌らかな明りの裡を、派手な若い男女の組、幸福らしい親子づれがぞろぞろ賑やかに通るのだが、今は、一とき前の引潮だ。道傍で生れた浮浪人さえ此世には無い自分の家を慕わせる逢魔が時だ。
シャンシャン、シャンシャン。夕刊売の鈴の音が、帰心にせかれる行人の心に、果敢ない底さむさを与える。
ぽつり、ぽつり、彼方此方に瞬き始めた街燈の蒼白い光とともに、私は、いよいよいそいだ。