Japanische Klassiker mit Furigana
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こいわいのいっか
小祝の一家
宮本 百合子
Lesen Sie 小祝の一家 (こいわいのいっか) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.193 Zeichen · 31 Bildschirme
乙女が少し立てつづけて喋ったりすると、不機嫌に、
「もういい。ねれ」
と云った。勉はカフェーの女給と乙女とを結びつけて感じることに馴れ得ないのであった。
では、乙女がそういう稼ぎにいくらかでも向いたかと云えば、どうして、勉が、或は乙女自身が考えているよりもっと、女給らしくもない妙な女給であった。
乙女の持番の客が来る。ボックスにどっかり腰かけ、
「さて、カクテールでも貰おうか」
すると、わきに立って眉をつり上げ、眼じろぎもせず註文を待っていた乙女が、
「カクテール一杯ね」
必ず念を入れて繰返し、自分自身に向って合点合点をしながら、眉をつり上げて去って、註文されたものを運んで来る。
客が、手を出して、乙女の体にさわろうとでもすると、乙女は、器用にはぐらかすことも口で賑やかに応酬することも出来ず、手など握られたまま、音も立てず体をちぢめ、高く高く二つの眉をつり上げた。美しいところのある乙女の顔は急にまたびっくりした野兎のように必死な表情になった。客は思いがけない変化に、馬鹿らしいような、照れたような気になり覚えず真顔にかえって手を離し、やがて、
「!」
舌打ちをするのであった。