Japanische Klassiker mit Furigana
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ろうじゅうのめがね
小笠原壱岐守
佐々木 味津三
Lesen Sie 小笠原壱岐守 (ろうじゅうのめがね) von 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 57.249 Zeichen · 115 Bildschirme
「……?」
「のう、そうであろうな。予は安藤じゃ。対馬じゃ」
「あっ。左様で厶りましたか! それとも存ぜず不調法恐れ入りまして厶ります。薩州浪士取締り早瀬助三郎組下の五名に厶ります」
「早瀬が組下とあらば腕利きの者共よな。夜中役目御苦労じゃ。充分に警備致せよ」
「御念までも厶りませぬ。御老中様もお気をつけ遊ばしますよう――」
人形のように固くなって、勤王浪土取締りの隊士達が見送っているのを、対馬守の足どりは実に静かだった。聖堂裏から昌平橋を渡って、筋違御門を抜けた土手沿いに、求める屋台の灯がまた六つ見えた。闇に咲く淫靡な女達が、不思議な繁昌を見せているあの柳原土手である、それゆえにこそ、くぐり屋台の六つ七つは当り前だった。
しかし客足は反対にここも寂れに寂れて、六軒に僅か三名きりである。
対馬守は沈痛にもう押し黙ったままだった。――これ以上検分する必要はない。盛り場の柳原にしてこれだったら、他は推して知るべしなのだ。目撃したとていたずらに心が沈むばかりである。
足を早めて屋敷に帰りついたのは、八ツをすぎた深夜だった。
寝もやらず待ちうけていた老職多井格之進が、逸早く気配を知って、寒げに老いた姿を見せ乍ら手をつくと、愁い顔の主君をじいっと仰ぎ見守り乍ら、丹田に力の潜んだ声で言った。