Japanische Klassiker mit Furigana
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ろうじゅうのめがね
小笠原壱岐守
佐々木 味津三
Lesen Sie 小笠原壱岐守 (ろうじゅうのめがね) von 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 57.249 Zeichen · 115 Bildschirme
突然長国が、引きつったような笑い声をあげた。
「ハハハハ……。ハハハハハ」
だが、四人の近侍達は驚きの色も現わさないで、ビーンビーンと谺し乍ら、洞窟さながらのような城内深くの闇と静寂の中へ不気味なその笑い声の吸われて行くのをじっときき流したままだった。殿の御胸中は分りすぎる程よく分っていたからである。屹度おうるさいに違いないのだ。殿御自身はとうに会津中将へ御味方の御決断も御覚悟もついているのに、重臣共がやれ藩名のやれ朝敵のといって何かと言えば薩長ばらの機嫌ばかりを取結ぽうと、毎日毎夜埒もない藩議を重ねているのが煩わしくなったに違いないのだ。――果然長国が吐き出すように言った。
「いっそもう野武士になりたい位じゃ。十万石がうるそうなったわ。なまじ城持ちじゃ、国持ちじゃと手枷首枷があればこそ思い通りに振舞うことも出来ぬのじゃ。それにつけても肥後守は、――会津中将は、葵御一門切っての天晴れな公達よ喃! 御三家ですらもが薩長の鼻息窺うて、江戸追討軍の御先棒となるきのう今日じゃ。さるを三十になるやならずの若いおん身で若松城が石一つになるまでも戦い抜こうと言う御心意気は、思うだに颯爽として胸がすくわ。