Japanische Klassiker mit Furigana
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ろうじゅうのめがね
小笠原壱岐守
佐々木 味津三
Lesen Sie 小笠原壱岐守 (ろうじゅうのめがね) von 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 57.249 Zeichen · 115 Bildschirme
「それとも、傷さえ浸けねばいいんだから、久方ぶりにひと風呂浴びますか」
道中、痛そうな顔さえもしなかったが、今宵ばかりは、よくよくこらえかねたのである。
「痛い。寝たい……」
言うまもずきずきするとみえて、ぐったりと横になり乍ら、痛そうに眉を寄せた。
すぐに、ふっくらとした夜の物が運ばれた。
しかし、臥せったかと思うとまもなくだった。――ゆくりなくも、思い忘れていた匂いを嗅ぎあてでもしたように、じっと目をすえ乍ら、ふんふんと鼻をうごかしていたが、突然力なく落ち窪んでいた直人の両眼が、ギラギラと怪しく光り出した。
匂って来たのだ。あの匂いが、女の匂いが、あの夜追われて、かくれて、はからずも嗅いだ肌の匂いが、髪の匂いが、女の移り香が、枕からか、夜着の襟からか、かすかに匂って来たのである。
「小次!」
「へい……」
むくりと起きあがると、直人が、青く笑って不意に言った。
「芸者を買おうか」
「え? ……芸者! ……突然またどうしたんでごわす」
「どうもせん。買いたくなったから買うのよ」
「その御病体で、隊長、妓を物しようというんですか」
「物にはせん、物したくもおれは物されんから、おまえらに買わせて、この枕元で騒がせて、おれも買うたつもりになろうというんじゃ、いやか」