Japanische Klassiker mit Furigana
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しょうせつ えんちょう
小説 圓朝
正岡 容
Lesen Sie 小説 圓朝 (しょうせつ えんちょう) von 正岡 容 (まさおかいるる) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 163.270 Zeichen · 325 Bildschirme
立ち上がってもういっぺん、世にも丁寧にお辞儀をして、それから圓朝はもときた道のほうへと歩きだした。
ともすれば滑りそうになる小さな石段を下り、古井戸の脇のところへ最前の手桶を戻すと圓朝は、
「お世話さまでした」
と遠慮深げにまだ地震のあとそのままの掘立小屋同様の門前の茶屋へ声を掛け、勘定キチキチに小銭を置いて、逃げるように表通りへでた。
右も左も向こう側もズーッとお寺。そのひと列の土塀の上へ、いつかまたしとしと糠雨がふりだしていた。ところどころ崩れた土塀の破れから、おそい一八が花ひらいて、深むらさきに濡れていた。
どこかで鳩の声がきこえた。
筋向うの、大きな濡れ仏の見えるお寺の角を急いで曲って、天王橋のところまででてきて、はじめて圓朝は、自分を取り戻したような心持になった。
もうここまできてしまえばいい。
何もずるいことをしたってわけじゃなし、お線香代お花代それは払って、ただ余分の心づけがしてやれないってだけのことだけれど、それが不思議に苦患だった。気がひけてひけてならなかった。
何かおそろしく不当なことでも仕出かしてきた自分ででもあるかのように、堪らなく何か気が咎められた。