Japanische Klassiker mit Furigana
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しょうせつ えんちょう
小説 圓朝
正岡 容
Lesen Sie 小説 圓朝 (しょうせつ えんちょう) von 正岡 容 (まさおかいるる) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 163.270 Zeichen · 325 Bildschirme
グオーン。
そのとき遠くの位牌堂のほうへ行く道で、誰かが鐘を鳴らしていった。それすら時にとっての本釣りと聞こえた。
「紀の国屋」
思わずこういってしまって、ギョッと口を押さえた。あわてて辺りを見廻した。幸い、誰もいなかった。急いで次のお経へかかった。
「一切の苦厄をだしたまう、舎利子、色は空に異らず、空は色に異らず、色即ち是れ空、空即ち是れ色、受想行識もまた是の如し」
ここのところはトントンといった。ことさらに連想さそわれるものがなかったからだった。でも、そのあとがまた、続けざまにいけなかった。
「生せず、滅せず、垢つかず浄からず、増さず減らず」
というところへきて、このごろ世間で時花っている阿呆陀羅経のないものづくしの真似をする蝶丸爺さんのあざらしのような顔を次郎吉は思いだした。危うく「坊主に簪さし場がない、畑に蛤掘ってもない」と傍らの小木魚叩いて歌いだしてしまうところだった。
「真耳鼻舌身意も無く、色馨香味触法も無く、眼界も無く、乃至、意識界も無く、無明も無く、また無明の尽くることもなく……」
いけない、いよいよないものづくし、だ。
「乃至老死も無く、また老死の尽くることも無く、苦集滅道もなく、智も無く、また得も無し、所得無きを以ての故に」