Japanische Klassiker mit Furigana
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しょうせつ えんちょう
小説 圓朝
正岡 容
Lesen Sie 小説 圓朝 (しょうせつ えんちょう) von 正岡 容 (まさおかいるる) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 163.270 Zeichen · 325 Bildschirme
「……」
またしても目が肯いた、嬉しげに、頼もし気に。
「ああ演りたい、早く演りたいなあ、一日も早く。それを演って二千七町八百八町を引っ繰り返してしまいたいんだ、ああ、ほんとに早く私は……」
今から大舞台いっぱいの豪華絵巻を目に描くとき、早くもとてもこうやってはいられないほどの芸拗を全身全魂に感じだしたらしく圓朝は、また半分ほど酌がせたなおしを今度はひと息に飲んでしまい、ブルブルブルと総身を慄わし、フーッと大きく息を吐きだすと、いつかすっかり黒雲重く垂れこめてしまっている川向こうの景色へ、勢い立っているいまの心の捌け場を探すもののよう目をやった。松浦様の大椎の木あたり、ようやく迫ってきている暮色をいやが上にも暗いすさまじいものにして、はや大粒の雨、そこでは飛沫を立ててふりだしているかとおもわれる。
「オ、いい心持でひとりで喋っていたら、とんだ空合になってきてしまった。降れるな今夜は」
降ることをばれると、仲間の符喋でいいながらスッと圓朝は立ち上がっていって欄干へ寄った。少し乗りだすようにして両国橋のほうを見るとポツリポツリ、早くも親指の尖のほど渦巻がいくつもいくつも川面へ描かれてはまた消えている。