Japanische Klassiker mit Furigana
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しょうせつ えんちょう
小説 圓朝
正岡 容
Lesen Sie 小説 圓朝 (しょうせつ えんちょう) von 正岡 容 (まさおかいるる) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 163.270 Zeichen · 325 Bildschirme
「万一のときのことを考えて私は二階に置いてある書きものの始末をつけてくるから」
こういって、
「すぐ下りてくるけれど、構わないから先へお前たちは寝ておしまい」
手燭片手に、そのままミシミシ音させて梯子段を上がっていった。また小銃が、乱れ打ちに聞こえてきた、「ヒ、人殺し」。そのあとヒイーと尾を曳いた異様に甲高い若い女の叫びといっしょに。車軸の雨の中走りゆく六、七人の足音が、にわかに乱れた。
二階の最前の部屋へ入ってペタンと坐り、傍らへ手燭を置いたとたん、裾風でだろうか、音もなく灯は消えてしまった。
鼻をつままれても分らない真の闇。雨で湿けた、生乾きに似た壁の匂いがムッと鼻を衝いて、また小銃が、砲声が、ワッワッワーッというような何とも分らない大ぜり合いのような声々が、近まってきてはまた遠のいていった、狸囃子のそれのように。
屋根叩く川面叩く大雨はいよいよ烈しくなりまさってきて、まさしく天の底が抜けるかとばかり、そういっても滝津瀬に似た、どんどんに似た、このすさまじい土砂降りを何としよう。
「……」
真っ暗な部屋に坐りつづけたまんま圓朝はいま、自分の周りと同じように、自分の心の中もやっぱり真っ暗であることを感じた。